作ることと壊すことは表裏一体・・・幼少期の学び方について

設計の仕事。近年、新卒で入って来る若者を見ていて「材料」に対する「直感」がはたらかないのがずっと気になっていた。(年々鈍感になっているような気がする)

材料とはいわゆる建材のこと。コンクリート、金属、木材・・・色々ある。で、重要なのは、これらの材料をどう使って壊れない形をつくるか。この時の直感がすごく弱い。重さや硬さから推測して、適度な寸法や構造フレームが頭に浮かばない。結果として、期待を大きく外した図面が出来上がってきてギョッとする。
設計の仕事には、ある程度の経験や知識は必要。しかし、材料や寸法の感覚があれば、大外れの図面にはならない。したがって、若者の直感のはたらかなさからは、もっと奥のほう、根本的な何かがすっかり抜けているように見える。

◆見ているだけ
そんなことを感じてから、若者の行動を観察してみた。すると「見ているだけ」の人が多いことに気づいた。
たとえば、建材のサンプルをもらったとき、彼らは興味深そうに見ている。けれど、押したり叩いたり曲げたりしない。手触りや重さを測るようなしぐさもない。じーっと見る。
建設現場に連れて行ったときも同じ。写真を撮って解説をメモするのは一生懸命。しかし、手が届くところに初めて見るものがあるにも関らず、触りたそうなそぶりがない。すごく視覚に頼って学んでいる印象を受ける。

◆触る ⇒ 壊す
見ているだけ、という若者に物足りなさを感じて、童心に返ってみた。くわえて、周りの幼児たちを観察してみた。すると、わかってきたことがある。

子供は、見知らぬ物を見つけたら、ともかく触りたい欲求がわきおこる。触る前に、危ない・臭い・気持ち悪い等を慎重に確かめる子はいるものの、誰しも触れそうなら触ってみる。そのうえで、一通り遊んで気がすんだら、子供は最後にどうするか。実は、誰も止めなければ「壊そう」とすることが多い。特に男の子はそうなる。何かにぶつけて割ってみたり、引っ張ってちぎってみたり、やり方は色々だが、ともかく破壊する。

大人は、子供たちの無闇な粗暴さを見ると、反射的に制止してしまう。が、これが決定的にダメ。若者に感じる物足りなさは、多分、これが影響している。

◆壊すことは大いなる学び
子供たちの小さな破壊行為。実は、これが大変重要な学びである。
どうすると壊れるのか、どんなふうに壊れるのか。放っておけば、物に限らず昆虫などの生物にも破壊行為がおよぶ。彼らはいったい何をやっているのか。それは、おそらく、壊すことから対象の性質を学んでいるのだ。一度の破壊行為では壊れる感覚が身につかないので、何度も壊す。繰り返すうちに対象の性質がわかってくる。すると、壊さなくなる。
大人にはそれが「飽きたからやめたのだ」と映る。しかし、そうではない。感覚として身についた、すなわち、学び終えたから壊すのを止めたのだ。

◆作ることと壊すこと
もの作りを考えたとき、材料の性質はものすごく大切。たいていの場合、材料で決まる。
では、材料の性質とは何か。それは、突き詰めると限界性能である。色々な外圧(耐水・耐圧・耐火・耐熱 等など)に対して“これ以上やったら壊れる”という限界ライン。限界性能を知ってはじめて、合理的な形や材料の組み合わせが思い浮かぶ。
重要なのは、限界性能とは、壊してみてはじめて知れるということ。土木や建築の学校では、コンクリートを圧壊させる様子を見せてくれる。が、その真の目的=壊すことの重要性を教えてくれる先生は少ない。
壊すことは、生み出すことにつながる。作ることと壊すことは表裏一体である。

◆日本人の創造性
日本人の創造性は低下の一途。一般には“理系離れ”が影響している等と言われる。が、それは本質ではない(なにせ、理系大の新卒生の性質が変わってきている)。
大事なのは、幼少期の学びの深さだ。そのうち「壊す」という行為は、決定的に重要。色々なものを壊した経験は、創造性の幅を広げる。

都市という人工空間で育った子供たちは、不憫なことにそのような経験が少ない。ものづくりとってもレゴブロックのようなものだし、外で遊ぼうにも公園のような危険を排除した施設しかない。そのうえ、親たちが見張っていて「危ない」とか「汚い」とか言って、やろうとするそばから介入する。おかげで、失敗(≒怪我)はしないが、重要な学びの機会をことごとく逸している。

自然の中で遊びまわる腕白な子供。そこで養われる感覚や観察力が対象への同化力を規定する。日本人の追求力の原点には、豊かな自然が与えてくれる深い学びがある。したがって、これを復活させていかないと、理系の大学をいくら増やしても意味がない。

教育制度等の狭い問題ではない。子供たちにとっての学びとは何か。親を含めた大人たちが、枠を外して、見方を変えないといけない。

多田奨

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